モデルケース

モデルケースMODEL CASE

家族信託のモデルケース(活用事例)(認知症対策、相続対策、事業継承対策、親亡き後問題など)について具体的に解説します。

認知症対策

悩み・相談

アパートを所有している父親が認知症になってしまったら、長男である私は父の代わりに物件を売却するのができるでしょうか?

解説

物件の所有者が認知症等により判断能力が低下してしまった場合、所有者自身の意思が確認できない限り、親族であっても勝手に売却することはできません。 この場合、成年後見制度を利用してご長男を後見人にして売却するしか方法はありません。また、後見人によって売却する場合、家庭裁判所の監督下に入るため、所有者にとっての利益が客観的に認められない限り売却する事ができません。また、売却だけでなく、アパートの修繕や保守のための契約でさえも、成年後見制度を利用しない限りできない事になってしまいます。 所有者であるお父様が元気なうちにご長男と信託の契約を交わせば、お父様は委託者となり、受託者であるご長男が物件の名義人となるため、お父様の判断能力が低下した状況においても、ご長男を売却の当事者として売却する事が可能になります。また、信託の契約内容によって、売却で得たお金についても受益者(お父様とする事もご長男や他の親族にする事も可能)に分配する事や、お父様が死亡してしまった場合に売却したお金の分配方法まで決めておく事も可能です。

相続(争族)対策①

悩み・相談

アパートを持っており、自分が亡くなった時に4人の子に平等に相続させたいのですが、不動産であるアパートを共有で持った場合、何かデメリットがありますでしょうか?

解説

アパートを共有した場合、売却や賃貸契約締結等の管理・処分する際に共有者の一部又は全員の同意が必要となってしまいます。今回のケースにおいて4人の子の一人が認知症になってしまうと、成年後見人を選任しないと売却ができず、運営に支障をきたしてしまいます。また、子の一部が亡くなってしまった場合、その相続人が共有者になる事になり権利関係が複雑になってしまいます。 家族信託を組み、4人の子の一人を受託者にし、他の子を受益者にしておけば、上記のようなリスクが発生したとしても受託者である子の一人による管理や売却等の処分をすることが可能ですし、他の子が亡くなったとしても、その相続人は分配を受ける権利(受益権)を相続することに留まるため、管理処分に支障をきたすことを回避することが可能です。

相続(争族)対策②

悩み・相談

3人の子がおり、そのうちの長男・次男の2人にだけ相続させたいが、自分の死後、相続できない子(三男)から他の兄弟への遺留分の請求が原因で兄弟が争うことが心配です。

解説

長男あるいは次男と信託契約を締結しつつ、公正証書遺言を作成することで、相続が発生した際の負担を軽減することが可能です。遺留分は民法で定められた、相続人が最低限度相続できる権利ですが、例えば、自宅、アパート、預金が主な財産であり、アパートと自宅は長男・次男の生活のために残したいというようなケースの場合、遺言で遺留分が請求された際に充てる財産の順序を定めておき(この場合、まず預金を充てる)、自宅とアパートは長男あるいは次男と信託契約を締結し、自宅とアパートは信託受益権にしておきます。そうすると、仮に三男から遺留分請求を受けたとしても、財産の順序により自宅とアパートまでは遺留分の権利が及ばない可能性が高まりますし、アパートまで及んだとしても不動産としては共有することができず、信託受益権として相続することとなり、管理や処分に対して三男の同意を得る必要がなくなります。(なお、信託契約の内容次第で、三男の死亡によって受益権を消滅させて、三男の相続人に承継させないようにすることも可能です。)

事業継承対策

悩み・相談

会社経営をしており、複数いる子の内の長男を後継者としたいが、自分が元気な間は経営は自分で行いたい。

解説

長男に株を相続させるという遺言を作成すれば長男に経営権は譲れますが、株を自己信託により信託財産とし、受益者を長男に設定することでも目的を成就させることができます。 遺言によって長男に株を譲る場合は相続税の課税対象となり、信託において長男を受益者に設定する場合は贈与税の課税対象となります。現時点での株の税務評価が低いが、将来的に上昇ことが見込まれるというような場合には、信託を利用することで相続税対策を行うことが可能となります。 なお、信託による場合においても株によってもたらされる利益は長男に行きますが、経営権は残したままにすることができ、自分が死亡の際には長男が株式を取得することができます。

親亡き後問題

悩み・相談

長男に知的障がいがあり、私が亡くなると、長男の世話をしてくれる人はいないので心配です。

解説

信頼できる親族と信託契約を締結することで、それまで共に生活をしていた家族が亡くなった後、受託者である親族からご長男に残した財産を生活に必要となる資金として、定期的に給付することができます。この場合に信託監督人として司法書士等の第3者を設定することでより安全に財産を残すことが可能です。また、ご長男が財産を使い切らずに死亡してしまった場合の財産の帰属先まで設定することが可能です。